「助成金が使えるなら、これを機に最適なeラーニングを導入したい」

今、このようにお考えの企業は多いのではないでしょうか。

新型コロナ禍でeラーニングの普及が加速しました。矢野経済研究所の調べによると、2020年度にはBtoB、BtoCともに、新型コロナウイルス感染症の影響によって遠隔教育の需要が高まり、前年度と比較して24%増の約2,918億円となりました。

その後の国内のeラーニング市場規模は拡大し、2023年度には3,773億円にのぼると予測されています。[1]

多くの企業で、最適なeラーニングの導入や機能拡張、リプレイスの検討が行われているのではないでしょうか。

そこでぜひ知っておいてほしいのが、人材開発支援助成金をはじめとしたeラーニングを対象とした助成金です。本稿では、従業員のeラーニングを支援する助成金の対象企業や申請方法に加え、eラーニング導入の参考になる最新情報をご紹介します。

この記事の監修者:飯塚 匡春(社会保険労務士)

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加速するeラーニングを対象とした補助金・助成金を紹介!

新型コロナ禍で、働き方が大きく変化し、多くの企業がその対応に追われています。その一つが、eラーニングをベースとした研修・教育です。

冒頭で紹介した矢野経済研究所の調べによると、eラーニング市場規模の拡大は新型コロナ禍以前から見られました。特に、BtoB市場では、「人材育成に対する投資の活性化」「働き方改革関連法の施行による企業の業務効率化の追求」「学習形態の一つとしてeラーニングが一般化」などの理由で、eラーニングの利用者数が増加したものと分析されています[2]

新型コロナ禍は、この流れをさらに加速する引き金になったと言えるでしょう。

こうした中、特に中小企業に対し、eラーニングの導入を政府や自治体が支援する動きがあります。

この記事では、eラーニングを対象とした助成金として4つの事業をご紹介します。まずは自社が支援の対象かどうかを確認してみましょう。

従業員の育成を支援「人材開発支援助成金」(厚生労働省)

人材開発支援助成金とは、従業員の人材育成やスキルアップを支援する制度です。訓練経費や訓練期間中の賃金の一部が助成されるもので、2022年4月からeラーニングによる訓練も助成対象となりました。

人材開発支援助成金には7つのコースがありますが、そのうちeラーニングが対象になるのは、人への投資促進コース、人材育成支援コース、事業展開等リスキリング支援コースの3つです。

eラーニングの場合、経費のみが助成対象となります。以下で詳しく説明します。

人材開発支援助成金(人への投資促進コース)

人への投資促進コースは、職場のDX推進や、IT分野未経験者が即戦力となるためのIT教育などに役立つほか、定額受け放題サービスの研修従業員の学び直し支援などにも活用できます。従業員は正規・非正規雇用(アルバイト・パートを含む)を問わず対象となります。

中でも、特にeラーニングに活用しやすいのが定額受け放題の研修サービス、いわゆるサブスク型の研修を対象とした「定額制訓練」です。新入社員研修にも適用できるため、積極的に活用しましょう。

定額制訓練

定額制訓練とは、定額受け放題研修サービス(サブスクリプション)による訓練です。

定額制訓練の対象と要件

対象となる訓練定額制サービスによる研修(業務上必要または義務付けられている内容のものに限る)
申請に必要な条件①労働時間に実施される訓練
②OFF-JTかつ、事業外で実施される訓練
③一人当たりの受講時間数合計が、10時間以上
経費助成率中小企業……45% 大企業………30%
※賃金要件または資格等手当要件を満たした場合、さらに+15%
支給対象となる経費基本料金+オプション経費 例:初期設定費用、アカウント料、管理者ID付与料金など
※タブレット・ルーターのレンタル、LMSの入力代行サービスなど、訓練に直接要する経費以外は対象外

厚生労働省「人材開発支援助成金(人への投資促進コースのご案内(詳細版)」,p12.13を元にライトワークスにて作成,https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001083356.pdf(閲覧日:2023年11月24日)

定額制訓練は職務に関連する訓練が対象となっていますが、新入社員、中堅職員、管理者など、入社時・昇級時などの時期に実施される訓練については、業務に必要なものとみなされ、支給対象となります。それだけではなくこれから業務で必要になるであろう内容を申請対象として出すことも可能です。

また、受講時間数は実際にかかったリアルな時間ではなく、関連のある内容を学習した時間が受講時間数となり、あらかじめ受講案内等で定められている標準学習時間でカウントします。さらに、支給申請時には、受講したことを証明する書類(修了証等)、訓練の実施状況が分かる書類(LMS情報の写し等)が必要です。

eラーニング受け放題サービス「まなびプレミアム」
人材開発支援助成金に対応しています

ライトワークスのeラーニング受け放題サービス「まなびプレミアム」は人材開発支援助成金(人への投資促進コース)の支給要件に対応しています。

人材開発支援助成金を利用しての導入をご希望の企業様には、助成金の支給申請時にご利用いただける修了証発行サービスをご提供しています。

また、ご要望に応じて助成金申請に精通した社労士のご紹介も可能です。まずはお気軽にお問い合わせください。

人への投資促進コースには、その他にも以下の5種類があります。いずれもeラーニングによる訓練が対象に含まれます。

高度デジタル人材訓練

DX推進や成長分野などでのイノベーションを推進する高度人材を育成するためのコース。ITスキル標準(ITSS)レベル3、4以上等の資格試験等を受験する際に申請できる訓練。

成長分野等人材訓練

DX推進や成長分野などでのイノベーションを推進する高度人材を育成するためのコース。大学院での高度な訓練が必要。海外の大学院での訓練も対象になる。

情報技術分野認定実習併用職業訓練

IT分野未経験者に対する、OJTとOFF-JTを組み合わせた訓練

自発的職業能力開発訓練

労働者の自発的な職業能力開発のための訓練

長期教育訓練休暇等制度

社内制度で教育訓練休暇制度や教育訓練短時間勤務等制度を導入し、労働者の自発的な職業能力開発を促進した場合の助成

上記5つの中では、高度デジタル人材訓練・成長分野等人材訓練が最大75%と、コースの中では最も高い助成率になっています。

人への投資促進コースの経費助成率

訓練メニュー対象訓練経費助成率
中小企業大企業
高度デジタル人材訓練高度デジタル訓練(ITスキル標準(ITSS)レベル3、4以上等)75%60%
成長分野等人材訓練海外も含む大学院での訓練75%
情報技術分野認定実習併用職業訓練OFF-JT+OJTの組み合わせの訓練(IT分野関連の訓練)60%
(+15%)
45%
(+15%)
自発的職業能力開発訓練労働者の自発的な訓練費用を事業主が負担した訓練30%
(+15%)
長期教育訓練休暇等制度長期教育訓練休暇制度(30日以上の連続休暇取得)制度導入経費20万円
(+4万円)
所定労働時間の短縮と所定外労働時間の免除制度

※()内は、賃金要件または資格等手当要件を満たした場合の率

厚生労働省「人材開発支援助成金(人への投資促進コースのご案内(詳細版)」,p2を元にライトワークスにて作成,https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001083356.pdf(閲覧日:2023年11月24日)

人材開発支援助成金(人材育成支援コース)

人材育成支援コースは、職務に関係する訓練のほか、管理職研修または新入社員教育や、非正規雇用社員の正社員化を目指す訓練等が対象となります。人材育成支援コースには、以下の3つがあります。

人材育成訓練

職務に関連した知識や技能を習得させるためのOFF-JT訓練

認定実習併用職業訓練

主に新入社員が対象で、中核人材を育てるために実施する、OJTとOFF-JTを組み合わせた訓練

有期実習型訓練

正社員への転換を目的として実施する、OJTとOFF-JTを組み合わせた訓練

eラーニングの場合、最大70%、15万円を上限に経費助成が行われます。また、従業員の賃金を向上させた事業主に対しては、助成額が上乗せされます。

人材育成支援コースの経費助成率

支給対象となる訓練経費助成率 ※()は中小企業以外賃金要件又は資格等手当要件を満たす場合
人材育成訓練正社員45%(30%)+15%
有期契約労働者等60%+15%
有期契約労働者等を正社員へ転換70%+30%
認定実習併用職業訓練45%(30%)+15%
有期実習型訓練有期契約労働者等60%+15%
有期契約労働者等を正社員へ転換70%+30%

厚生労働省「人材開発支援助成金(人材育成支援コース)のご案内」,p28を元にライトワークスにて作成,https://www.mhlw.go.jp/content/11800000/001087575.pdf(閲覧日:2023年5月11日)

人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)

事業展開等リスキリング支援コースは、事業展開やDX等のため、新たな分野についての訓練を行う際に活用できます。

対象となるのは、事業展開にあたり、新たな分野で必要となる専門的な知識の訓練、または事業展開は行わないが、DX化やグリーン・カーボンニュートラル化を進める場合、関連する業務に必要となる専門的な知識の訓練です。

eラーニングの場合、最大75%を上限に経費助成が行われます。育休中の従業員についても、自発的に受講を希望した場合は、助成の対象となります。

人材開発支援助成金の申請方法と要件

人材開発支援助成金は、コースごとに申請方法や要件が異なりますが、使用したい場合は研修開始日の一ヶ月以上前からの準備が必要です。詳細は厚生労働省HPの最新情報をご確認ください。

参考)厚生労働省「人材開発支援助成金」,https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/d01-1.html(閲覧日:2023年5月11日)

eラーニングに特化した「オンラインスキルアップ助成金」(東京都)

東京都産業労働局は、新型コロナ禍で多くの企業で休業や在宅勤務が続く状況を受け、2020年4月に、中小企業人材オンラインスキルアップ支援事業を開始しました。この事業は一部内容を変更し、オンラインスキルアップ助成金として継続して募集が行われています(2023年5月現在)。

内容は、民間の教育機関やサービス提供会社等が提供するeラーニングの利用について、受講料などの経費が助成されるというものです。

オンラインスキルアップ助成金のポイント

オンラインスキルアップ助成金とはどのような助成金なのか、ポイントを以下にまとめます。

  • eラーニングに特化している
  • 受講料などの経費について小規模企業者は3分の2、その他の中小企業等事業者は2分の1を助成
  • eラーニングによる研修・教育は通常の勤務時間内で業務として行う

eラーニングに特化している

オンラインスキルアップ助成金は、民間の教育機関やサービス提供会社によるeラーニング(オンライン会議システムを使用した訓練も含まれる)が対象です。業務に必要な知識や技能の習得や資格取得が目的であることが定められています。

・受講料などの経費について小規模企業者は3分の2、その他の中小企業等事業者は2分の1を助成

助成対象期間内であれば、上限額に達するまでは受講人数や回数などに決まりはなく、助成が受けられます。上限額は、小規模企業者が27万円、その他の中小企業等が20万円です。申請は1回のみで、追加や内容の変更は認められません。従業員に受けさせたいセミナーなどがある場合、受講料と人数を決定した上で申請を行うようにしましょう。

eラーニングによる研修・教育は通常の勤務時間内で業務として行う

あくまで今までの集合研修、対面研修に変わる手段としてeラーニングを導入しようとするもので、対象となるeラーニングは通常の勤務時間内で通常の賃金が発生する業務内で行うことが条件です。

オンラインスキルアップ助成金の対象と要件

助成金を受けられる要件は以下のとおりです。

  • 都内に本社又は主たる事業所がある中小企業事業主および一部の共同団体であること
  • eラーニングの内容が業務に必要な知識や技能の習得と向上、資格取得に関するものであること
  • 受講者の訓練実施状況が確認できること

都内に本社又は主たる事業所がある中小企業事業主および一部の共同団体であること

申請できるのは、「資本金の額または出資の総額」と「常時使用する従業員数」のどちらかの条件にあてはまる中小企業が対象です。

業種分類資本金の額または出資の総額常時使用する従業員数
小売業・飲食店5,000万円以下50人以下
サービス業5,000万円以下100人以下
卸売業1億円以下100人以下
その他3億円以下300人以下

さらに、中小企業のうち、以下に該当する小規模企業者については、助成金の額や割合がさらに多くなります。

業種分類常時使用する従業員数
小売業・飲食店5人以下
サービス業5人以下
卸売業5人以下
その他20人以下

出典)「令和5年度オンラインスキルアップ助成金(中小企業人材スキルアップ支援事業)」,『公益財団法人 東京しごと財団』,https://www.shigotozaidan.or.jp/koyo-kankyo/boshu/online.html(閲覧日:2023年4月20日)

また、事業協同組合、事業協同小組合、信用協同組合などの団体のうち、団体の構成員の3分の2以上が中小企業である場合も対象となります。その際、団体の職員は、助成対象とはならず、団体を構成する中小企業の従業員が助成対象となります。

eラーニングの内容が業務に必要な知識や技能の習得と向上、資格取得に関するものであること

オンラインスキルアップ助成金は、先述のとおり、業務を行う上で必要となる知識やスキル・資格の取得を目的とすることが、助成の要件とされています。

受講者の訓練実施状況が確認できること

助成を受けるには、対象の訓練をすべて終了し、実績報告書を提出する必要があります。報告書をもとに受講状況や支払い実績の審査があり、それらがすべて完了してから助成金が支給されます。eラーニングを申し込む前に、その訓練が助成の対象となるかどうかを相談するといいでしょう。

また、受講するeラーニングは、受講案内と受講料等がホームページやパンフレット等で一般に公開されている必要があります。※オーダーメイドでセッティングした研修内容は申請が通らないのでご注意ください。

オンラインスキルアップ助成金の申請方法

申請は交付申請→交付決定→実績報告の3段階で行います。

まずは交付申請書を作成し、その他の提出書類とあわせて申請期間中に公益財団法人東京しごと財団まで郵送します。申請期間は年度内(※)に6回設けられています。助成を受けたいeラーニングの実施日等に合わせて申請しましょう。※4月1日~翌年3月31日まで

対象となる中小企業の条件や助成対象となるeラーニングの要件、申請など、詳細は公益財団法人東京しごと財団のサイトにて最新情報を確認してください。

参考)東京都産業労働局、「東京都中小企業職業訓練助成制度」、『TOKYOはたらくネット』、https://www.hataraku.metro.tokyo.lg.jp/jinzai/ikusei/kunren_josei/(閲覧日:2021年4月4日)

「令和5年度オンラインスキルアップ助成金(中小企業人材スキルアップ支援事業)」,『公益財団法人 東京しごと財団』,https://www.shigotozaidan.or.jp/koyo-kankyo/boshu/online.html(閲覧日:2023年4月20日)

人材開発支援助成金対応のeラーニング受け放題サービス「まなびプレミアム」

新規ITツールの導入に特化した「 IT導入補助金」(独立行政法人中小企業基盤整備機構)

IT導入補助金は、中小企業の新規ITツール(ソフトウェアやクラウドサービス等)導入を促進するための制度で、企業の生産性向上を支援するという目的で支給されます。DX推進にもぜひ活用したい補助金です。

IT導入補助金のポイント

IT導入補助金のポイントを以下にまとめます。

  • IT導入支援事業者から自社に必要なITツールを導入する場合に適用される
  • IT導入支援事業者と連携しながら申請を行う
  • e-ラーニングが対象となるのは「通常枠(A・B類型)」

IT導入支援事業者から自社に必要なITツールを導入する場合に適用される

まずは自社の課題を解決するようなITツールの導入を検討することから始めます。この時に、IT導入支援事業者が、事務局に登録済みの商品・サービスから選択する必要があります。登録されていない事業者のITツールを導入しても、IT導入補助金の対象にはなりません。

eラーニングの導入に活用する場合、eラーニングのシステム等を提供しているIT導入支援事業者の中から自社に必要なサービスを選択します。※IT導入事業者はIT導入補助金のHPより検索することができます。一度ご確認ください。

IT導入支援事業者及びITツールの一覧は、以下サイトから確認することができます。

参考)一般社団法人 サービスデザイン推進協議会「IT導入支援事業者・ITツール検索」,『IT導入補助金2023』,https://www.it-hojo.jp/applicant/vendorlist.html(閲覧日:2023年5月1日)

IT導入支援事業者と連携しながら計画書の作成、申請を行う

IT導入補助金は、IT導入支援事業者と連携しながら申請を行う必要があります。IT導入支援事業者が決定したら、自社の業種や事業規模、経営課題に沿って、IT導入支援事業者と導入したいITツールを選定します。

その後、IT導入支援事業者と共同で計画書を作成し、申請をします。その後採択されたら、交付申請手続きを行います。また、補助金の交付を受ける事業を実施した後も、IT導入支援事業者と共同で「事業実施効果報告」を作成、事務局に提出します。

e-ラーニングが対象となるのは「通常枠(A・B類型)」

IT導入補助金には、「通常枠(A・B類型)」、「セキュリティ対策推進枠」、「デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)」があります。そのうち、e-ラーニングの導入が対象となるのは、「通常枠(A・B類型)」です。労働生産性向上のためのITツールであれば対象となり、eラーニングもこれに含まれます。

※コロナウイルス感染拡大期に実施されていた「低感染リスク型ビジネス枠(特別枠:C・D類型)」は2023年度現在廃止となっています。

通常枠A類型では、費用の1/2を申請可能で、補助上限は最低5万円~最大150万円未満になります。B類型の場合、費用の1/2を申請可能で、最大450万円の補助となります。金額も大きくなりますが、その分導入するITツールに多くの機能を付ける必要があります。

詳細は以下の表のとおりです。

類型補助金申請額補助率賃上げ目標補助対象
A類型5万円~ 150万円未満1/2以内加点項目ソフトウェア購入費及び導入するソフトウェアに関連するオプション・役務の費用
B類型150万円~ 450万円以下必須要件

出典)一般社団法人 サービスデザイン推進協議会「IT導入補助金2023 公募要領 通常枠(A・B類型)」,p16,https://www.it-hojo.jp/r04/doc/pdf/r4_application_guidelines.pdf(閲覧日:2023年5月1日)

IT導入補助金の対象と要件

IT導入補助金の対象者と主な要件は次のとおりです。

  • 日本国内で事業を行う中小企業・小規模事業者等であること
  • gBizIDプライムアカウントを取得していること

日本国内で事業を行う中小企業・小規模事業者等であること

中小企業・小規模事業者の詳細については、業種・組織形態ごとに資本金、従業員数などで規定があります。個人事業主も含まれます。詳細はIT導入補助金のサイトでご確認ください。

参考)一般社団法人 サービスデザイン推進協議会「事業概要」,『IT導入補助金2023』,https://www.it-hojo.jp/overview/(閲覧日:2023年5月1日)

gBizIDプライムアカウントを取得していること

電子申請のため、gBizIDプライムアカウント[3] の取得が必要です。gBizIDとは1つのアカウントでさまざまな行政サービスにログインできるサービスです。IT導入補助金以外にも令和5年の6月からは助成金の電子申請にも利用できるため、登録しておくと便利です。

IT導入補助金の申請方法

IT導入補助金の申請には以下のステップが必要です。

  1. IT導入支援事業者・ITツールを選定する
  2. 申請に必要なgBizIDプライムアカウントを取得する
  3. 申請マイページ開設(IT導入支援事業者とやりとりを行う)
  4. 計画書の作成、申請
  5. 採択発表後、採択されたら交付申請を提出
  6. 交付決定後に発注・契約・支払い

前述のIT導入支援事業者が提供するITツールを選択し計画書を提出したら、事務局の審査が入ります。採択結果が通知される前に契約を進めることのないように注意しましょう。

また、補助金の受給後は3年間、生産性向上率の情報の報告を一年に一度行う義務があります。効果報告もマイページより行います。申請者は売上や原価、従業員人数及び就業時間などを入力し、IT導入支援事業者に報告します。IT導入支援事業者はこれを確認し、事務局へ提出します。少し手間かもしれませんが、そこまで時間のかかる作業ではありませんので、ご安心ください。

休業中の従業員教育を支援「雇用調整助成金」(厚生労働省)

雇用調整助成金とは、経済上の理由で事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、休業および教育訓練により労働者の雇用の維持を図る場合に、休業手当、賃金の一部が助成されるというものです。新型コロナの影響で特例措置が設けられ、その中で初めて、教育訓練の内容にeラーニングが加わりました。

オンラインスキルアップ助成金やIT導入補助金と違い、eラーニングやIT導入が主目的というわけではありませんが、条件を満たしていれば以下の助成金を申請することができます。

なお、申請期限は「支給対象期間」の最終日の翌日から起算して2カ月以内です。

参考)厚生労働省「雇用調整助成金  ガイドブック(簡易版)」,p10,https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000783188.pdf(閲覧日:2023年5月15日)

助成金を活用して最適なeラーニングを導入しよう

eラーニングで活用できる助成金についてご紹介してきました。ここからは自社に最適なeラーニングの選び方についてまとめた記事をご紹介します。

自社に最適なeラーニングを選ぶ基準

今は多くの企業がさまざまなeラーニングのサービスを提供していて、何を基準に選定していいのか迷うことも多いでしょう。eラーニングの一覧を比較する前に、まずは自社の要件を明確にし、それが満たされるサービスを検討しましょう。

eラーニングの導入計画を立てるために検討しておくべき情報については、以下のページで詳しく解説しています。

まずは、自社の経営目標や課題に対して教育施策がどのように関与できるかを整理してみることから始めましょう。次に、その教育を受けるべき対象者をピックアップし、登録ユーザー数として想定します。

教材の準備の仕方には、(1)既製品を購入する(2)既製品をカスタマイズする(3)教材をオーダーメイドする(4)教材を自社で制作する、の4パターンがあり、それぞれ検討方法が異なるのでチェックしてみてください。

また、LMS(Learning Management System:学習管理システム)ベンダーの選び方については以下のページを参考にしてみてください。

LMS(学習管理システム)ベンダーの選び方〔ベンダー比較表サンプル付〕

eラーニングの活用方法

eラーニングをどのように活用すればよいか、ヒントが欲しい方は以下の記事もご参照ください。

無料eBook「eラーニングシステム徹底比較」

企業向けeラーニングシステム10件の比較、eラーニングシステム選定時に知っておきたいポイントなどをまとめた、eラーニング導入時に役立つ情報満載の一冊です。

まとめ

eラーニング市場規模の拡大は新型コロナ禍以前から見られていましたが、新型コロナ禍以降はますます顕著になっています。

eラーニングの導入はもはやスタンダードとなりつつあり、政府や自治体でも導入による積極的な教育、人材開発の支援を行っています。

本稿では4種類の助成金、補助金、東京都独自の支援事業について取り上げました。企業でのeラーニング導入をお考えの際には、eラーニングを対象とした助成金の活用をご検討頂いてはいかがでしょうか。助成金の財源は、企業が支払う雇用保険料です。支払うだけでなくうまく活用し、他企業との差をつけていきましょう。

新型コロナ禍で、会社=勤務地という概念が大きく変わりましたが、働く場所がどこであっても、人材育成の必要性、重要性は何ら変わることはありません。いつの時代も人材教育は企業成長の要です。eラーニングをうまく活用し、ぜひニューノーマル時代を勝ち抜く強い企業を目指しましょう。

[1]「eラーニング市場に関する調査を実施(2023年)」、『矢野経済研究所』、https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3233(閲覧日:2023年5月12日)
[2]脚注1参照
[3]経済産業省、「gBizID」、https://gbiz-id.go.jp/top/(閲覧日:2021年4月7日)

この記事の監修者

飯塚 匡春

保有資格

社会保険労務士、行政書士、入国管理局認定申請取次行政書士

経歴

社会保険労務士法人イイズカ事務所 代表
行政書士法人イイズカ事務所 代表
保険会社で7年勤務後、行政書士・社会保険労務士資格を取得し、2015年開業。
2019年社会保険労務士法人イイズカ事務所(旧法人名・社会保険労務士法人ADEPT)を設立する。埼玉労働局での勤務経験を活かし、企業の労務管理、助成金の申請代行を専門的に行う。また、労務環境改善のコンサルティングや、外国人雇用に関する労務相談・雇用契約・規定整備などの支援も行っている。

Webサイト

社会保険労務士法人 行政書士法人 イイズカ事務所