知っててよかった 現地編

中国ビジネスライフのインターネット検閲対策入門[代替ツール案付]

2024.4.9 更新

「中国ではインターネットが検閲されていると聞くけれど、どのくらい自由にネットを使えるのだろう?」

中国では、グレート・ファイアウォール(金盾)と呼ばれるインターネット検閲システムによって、当局がさまざまな規制を敷いています。

ここでは、中国のインターネット事情を簡単にご紹介するとともに、「どのようなWebサービスが利用できないのか(検閲の対象)」と「インターネット検閲システムの影響を受けないためには何をすべきか(検閲への対策)」を具体的に解説します。

さらに、中国独自の代替Webサービスもご紹介します。

今や日々の暮らしやビジネスに欠かせないインターネット。その現地事情を理解することは、中国の社会を理解することにつながります。

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1. 中国のインターネット環境は、日本以上に整備されている

かつての中国では、インターネットの環境整備が行き届いておらず、インターネットに接続できる場所があまりない、という状況も見られました。

しかし今では、都市部の現地オフィス等で仕事を進める上で、全く問題なく快適にインターネットに接続できる状況になっています。

オフィス以外でも、空港やホテル、カフェなど、中国の都市部には無料Wi-Fiが利用できる場所が数多くあります。また、地下鉄やバス、タクシーなどの公共交通機関でも、無料でWi-Fiに繋げるスポットが増えています。

全国的な統計を見ると、2023年6月時点での中国のインターネット利用者数は10億7,853万人で、インターネットの普及率は76.4%となっています。

第5世代移動通信システム(5G)に至っては、2022年末現在で全国に231万2000台の基地局が建設され、世界の基地局総数の60%以上を占めています。

2. ビジネスへの影響必須!中国のインターネット検閲システム

中国赴任において注意したいのが、「インターネット環境の整備が整っている=日本と同じようにインターネットが使える」わけではない、という点です。

2-1. 中国のインターネット規制とは

中国にはグレート・ファイアウォール(金盾)というインターネット検閲システムが導入されており、接続できるwebサービスに制限があります。

日本で使っているサイトに接続できないと、本社への連絡やクライアントとのやり取りにも支障が出てしまいます。

中国でビジネスを成功させるには、どのようなWebサービスにアクセスできないのかを知り、検閲システムの影響を受けない方法を把握しておく必要があります。

グレート・ファイアウォール(金盾)とは?

グレート・ファイアウォールとは、中国政府のネット検閲システムのことです。当局がインターネット上の情報を監視しており、政府の方針に抵触すると判断されたWebサイトやWebサービスはすべて遮断されます。

・中国の社会問題に関わるような、政府に対して不利益になる情報や、アダルトサイトなど

主要SNSや動画サイトなど、中国のIT戦略に関わるwebサービスやアプリケーション

これらにはアクセスできません。

グレート・ファイアウォールの規制を受けずに、こうしたサービスを使うには、VPNなどの対策が必要です。

2-2. [検閲の対象]中国でアクセスできない代表的なWebサービス一覧

具体的にどのようなWebサービスにアクセスできないのでしょうか。

中国でアクセスが禁止されている代表的なWebサービス(2023年11月21日時点)

ビジネスへの影響が懸念されるもの

  • Google
  • Yahoo!検索
  • Dropbox

プライベートでの影響が懸念されるもの

  • YouTube
  • Facebook
  • LINE
  • X(旧Twitter)
  • Instagram

・Google (https://www.google.co.jp/)

ビジネスパーソンにとって最も影響が大きいと考えられるのが、Googleにアクセスできないことです。中国では、Google社が提供する以下のWebサービスも利用することができません。

  • Google検索
  • Googleドライブ
  • Googleマップ
  • Googleカレンダー
  • Gmail
  • Google翻訳

普段、Googleカレンダーでスケジュールを共有したり、Googleドライブで社内資料を保管している方は、何らかの対策が必要です。

・Yahoo!検索 (https://www.yahoo.co.jp/)

Yahoo!に関しては、検索サイトやYahoo!ショッピングがブロックされている一方で、Yahoo!ニュースやYahoo!地図は、日本と同じようにアクセスできるなど、サービスによって異なります。

・Dropbox (https://www.dropbox.com/)

Dropboxを使って、社内やクライアントとファイルを共有することができません。

・YouTube (https://www.youtube.com/)

お気に入りのユーチューバーがいたり、好きな曲を聴いたりと、YouTubeがすでに生活の一部になっている方もいるかもしれませんが、中国からはアクセスできません。

・Facebook(https://www.facebook.com/

Facebookで公式ページを設置し、Facebookを使った広報や広告活動を行っている企業もありますが、中国からはFacebookでの投稿や閲覧ができません。

・LINE (https://line.me/ja/)、X(旧Twitter) (https://twitter.com/)、Instagram (https://www.instagram.com/)

Facebookと同じく、LINEやX(旧Twitter)、InstagramのようなSNSも検閲対象になっており、アクセスすることはできません。

このように、日本では一般的なWebサービスやアプリを、中国では使用することができません。ご紹介したもの以外にも、当局の規制対象になっているWebサービスは数多くあります。

また、中国国内の状況に応じて、突如アクセスが禁止される可能性もあります。

中国で利用予定のWebサービスがあれば、規制対象になっていないか、渡航前にご自身で確認されることをお勧めします。

規制対象かどうかを調べる方法(2023年11月22日現在)

利用したいWebサービスが規制対象かどうかを確認したい時は、以下でチェックできます。

comparitech「Test if a site is blocked in China」

https://www.comparitech.com/privacy-security-tools/blockedinchina/

使い方はとても簡単です。利用したいと思っているWebサイトのURLをボックスに入れて、「Check」を押すだけです。

ビジネスで利用しているWebサービスやお気に入りのSNSなどがあれば、事前に確認しておきましょう。

3. [検閲への対策]インターネット検閲の対策にはVPNが有効

VPNとは、バーチャルプライベートネットワーク(Virtual Private Network)のことで、「仮想ネットワーク空間」という意味があります。

本来、VPNはデータの改ざんや盗み見などに対するセキュリティとして使うものですが、中国では、規制対象のWebサービスにアクセスできる方法として利用されています。

VPNを利用すれば、GoogleやFacebook、YouTubeなどにもアクセスできるので、日本と同じインターネット環境を構築できます。

近々中国に赴任することが決まっているのであれば、早い段階でVPNの利用を検討すると良いでしょう。

中国で使えるおすすめVPN コスト・速度・安定性でみる優秀トップ5

中国国内でもVPNを使う若者が増加

中国でVPNを使うのは海外からのビジネスパーソンだけではありません。中国国内の若者たちもVPNを利用しています。

例えば、大学の研究資料を探し論文を仕上げるために、日本やヨーロッパのWebサイトから情報を収集するべく、VPNを活用しています。

また、海外の動画を見るために、VPNを使ってYouTubeを見る若者もいます。

中国国内でも、グローバルな情報を収集するためにVPNを利用している人がいるくらいなのです。日本のビジネスパーソンにとってGoogleやDropbox、Yahoo!検索は、重要なWebサービスですから、中国に赴任する人にとって、VPNの事前準備は欠かせないと言えます。

4. [検閲への対策]中国独自の代替Webサービス

中国赴任に向けてVPNを準備しても、検閲の関係で突如使えなくなる可能性があります。そのような時は、中国独自のWebサービスを、代替ツールとして使うことになります。

非常時だけではなく、普段からこれらの代替ツールを使いこなすことができれば、中国国内の情報を入手しやすくなりますし、中国人とのコミュニケーションがスムーズになります。

4-1. 中国で使えるWeb検索サービス

以下が、中国の代表的なWebサービスです。

「Baidu」「Bing」→「Google」の代替

・Baidu (http://www.baidu.com/)

Baiduは百度公司が運営する中国最大級の検索エンジンです。中国語では「百度」と書きます。

中国国内最大のシェアを誇っており、Googleの代替ツールとして利用できます。

図)Baiduのホーム画面

引用元:Baidu, http://www.baidu.com/ (閲覧日:2023年12月11日)

Baiduには、検索機能、機械翻訳、ニュース、地図機能だけでなく、Facebookのように情報を交換できるSNS機能もあります。

Binghttps://www.bing.com/

中国国内で使える検索エンジンには、Bingもあります。

こちらはアメリカのMicrosoft社が運営する検索エンジンで、「国内版」と「国際版」に切り替えができるようになっており、中国赴任者にも使い勝手の良いWebサービスです。

4-2. 中国のメッセンジャーアプリは生活の必需品

「WeChat」→「LINE」の代替

・WeChat (https://www.wechat.com/)

WeChatは中国版LINEとも呼ばれているインスタントメッセンジャーです。

実際にはLINEの代替という枠を超えて、中国生活の必須ツールとなっています。日常のメッセージはもとより、ビジネスシーンでは名刺交換代わりにWeChatのアドレス交換し、附帯するアプリ決済機能のWeChatPayは買い物の支払いに欠かせません。

WeChatには、LINEの機能である「タイムライン」に似た「モーメンツ」というものがあり、写真やテキストの投稿ができるSNS機能もあります。

図)WeChatの画面

中国生活ではマスト!ビジネスシーンでも必須なWeChat/微信の使い方

4-3. 娯楽の枠を超えた、中国の動画サービス

中国のネット動画は、もはや単なる娯楽ツールではありませんインフルエンサーのEC業界における影響力は凄まじく、一般人の投稿でも侮れません。ビジネスの内容によっては、中国の動画サービスを使いこなせるかどうかで業績が左右されるかもしれません。

以下が、代表的な動画サービスです。

「抖音」「快手」「iQIYI」「Tencent Video」「优酷」「bilibili」→「YouTube」の代替

いずれも中国を代表する動画配信サービスであり、YouTubeの代替として利用できます。いずれも日本語で検索をしたり、日本語コンテンツの視聴をすることも可能です。

抖音 Douyinhttps://www.douyin.com/

抖音(Dou yin)は、TikTokの中国版で、動画配信サービス業界では中国トップのシェアを誇ります。誰でもショート動画を気軽に投稿できます。

快手 Kuaishou (https://www.kuaishou.com/)

快手(Kuai shou)は、抖音に次ぐユーザー数を持ち、抖音よりも幅広い層に視聴されています。

・iQIYI https://www.iqiyi.com/

iQIYIは中国語で「爱奇艺」と書きます。「中国版Netflix」と呼ばれ、自社コンテンツが豊富です。

・Tencent Video https://v.qq.com/

Tencent Videoは中国語で「腾讯视频」と書きます。WeChatもTencent社です。

・优酷Youku (https://youku.com/)

优酷(Youku)はEC最大手、アリババの傘下です。かつて「中国版YouTube」と呼ばれ、絶大な人気を誇っていましたが、最近では他社サービスが増えた影響を被っています。

・bilibili (https://www.bilibili.com/

bilibiliは中国語で「哔哩哔哩」と書き、ビリビリと読みます。日本のWebサービスにあてはめると、「中国版ニコニコ動画」と呼べる動画共有サイトで、日本のコンテンツも視聴することが可能です。

各サービスにおいては、無料会員でも動画を閲覧できますが、有料会員になればより幅広い動画を見ることができます。

4-4.中国版インスタグラムは口コミの宝庫

「小紅書」→「Instagram」の代替

・小紅書(https://www.xiaohongshu.com/

写真や動画が投稿できて、コメント投稿機能もついた小紅書は、中国版インスタグラムとして広がりましたが、現在では「巨大口コミアプリ」という側面が大きくなっています。

ECアプリによるネット通販が普及するにしたがい、小紅書の写真や動画の付いた口コミ投稿が、主に若い女性に爆発的にヒットしました。今ではEC機能も追加され、ECサイトへ外部移動することなく、口コミから直接購入できます。

この章では、Google、LINE、YouTubeの代替ツールをいくつかご紹介しましたが、他にも中国独自のWebサービスは数多くあります。

中国の現地従業員や中国人のクライアントとの連絡は、通常、中国のWebサービスを使うことになります。彼らとコミュニケーションを図り、個人的な関係を築くためにも、中国のWebサービスに通じておくと良いでしょう。

4. まとめ

今回は中国のインターネット事情についてご紹介しました。中国のインターネット環境の整備は非常に進んでおり、都市部のオフィスでのインターネット環境に問題がないだけではなく、空港やホテル、地下鉄やバス、タクシーなどでも無料でWi-Fiにつなぐことができます。

しかし、中国にはグレート・ファイアウォールというインターネット検閲システムがあるので、日本で普段利用しているWebサービスの一部は利用できません。中国からアクセスできない主なWebサービスは以下の通りです。

  • Google
  • Yahoo!検索
  • Dropbox
  • YouTube
  • Facebook
  • LINE
  • X(旧Twitter)
  • Instagram

特に、GoogleやYahoo!検索はビジネスシーンで利用することが多いので、中国赴任者は対策を講じる必要があります。

対策の一つはVPNを利用することです。VPNを利用すれば、ネット検閲システムの影響を受けることなく、日本と同じように慣れ親しんだWebサービスにアクセスできます。

VPNが使えなくなった時などは、中国独自のWebサービスを代替ツールとして使ってみましょう。中国で使える代表的な代替ツールには、以下のものがあります。

  • 「Baidu」「Bing」→「Google」の代替
  • 「WeChat」→「LINE」の代替
  • 「抖音」「快手」「iQIYI」「Tencent Video」「youku」「bilibili」→「YouTube」の代替
  • 「小紅書」→「Instagram」の代替

WeChatなど、代替ツールの枠を超えて、中国生活やビジネスの必需品となるアプリもあります。単なる代替ツールと思わず、まずは積極的に使ってみるといいかもしれません。

中国のインターネット普及率は年々増加しており、今後、中国のインターネット環境はさらに整備されていくでしょう。

しかし、中国赴任者にとって、中国政府が実施しているインターネット検閲システムはビジネスに大きな影響を与えるものです。

VPNの利用や代替ツールの利用などの対策を取り、中国でのビジネスの成功につなげてください。

  • 中華人民共和国工業和信息化部「2022年通信业统计公报」, https://www.miit.gov.cn/gxsj/tjfx/txy/art/2023/art_77b586a554e64763ab2c2888dcf0b9e3.html,2023年1月19日(閲覧日2024年3月12日)
  • 中華人民共和国工業和信息化部「2022年通信业统计公报解读:行业持续向好 信息基础设施建设成效显著」, https://www.miit.gov.cn/zwgk/zcjd/art/2023/art_9f5022af3cdf48789484117d9da03c58.html,2023年1月20日,(閲覧日2024年3月12日)
  • 第一生命経済研究所「金盾の衝撃 ~サイバー空間に拡がる万里の長城~」,https://www.dlri.co.jp/pdf/ld/2019/wt1907.pdf,(閲覧日2024年4月5日)
  • JETRO「中国 EC 市場と活用方法」, https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/01/0f325ff0aaf3c1b8/20210012.pdf , 2019年7月5日(閲覧日2024年3月12日)
  • アライドアーキテクツ株式会社「中国マーケティングラボ」『海外SNSブロックは「建前」YouTubeを普通に見ている20代の中国人』, https://monipla.com/china-smmlab/page/china_sns_vpn (閲覧日:2023年12月11日)

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